2色のガーベラ 夫婦別姓資料館

 自民党は与党なので通常なら法制審答申はそのまま政府案として出すのですが、その自民党内であまりに抵抗が強く、なかなか提出に至りません。「例外的」と呼称を変えるなどの工夫もしましたが、2002年に森山法務大臣は政府案では提出が困難だと発表した後に、次に議員立法という新バージョンが登場しました。

 その議員立法とは「民法の一部を改正する議員立法案〜例外的夫婦別姓制度」で、法制審答申をベースに家裁の許可というハードルが新しく設けられています。この法案では自民党の有志議員「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」を中心に、2002年7月24日に自民党法務部会に提出されました。

 なぜハードルを設けたかというと、反対派の議員が「夫婦が別姓なんてふしだらだ」「ファッションのように別姓を安易に選ぶ夫婦が出て社会が混乱する」と強い懸念を示し、続けて「たとえば家裁の審査を経るのであれば…」と提案した(口を滑らせた?)ことがきっかけです。反対派からの提案をうけ、反対派と推進派は一歩近づくことができました。この案では、不利益を被っている切実な人を救済することを優先し、反対派に譲歩した内容となっています。

 また、家裁許可制にするとの提案をのんだのは単に売り言葉に買い言葉でも行きがかり上でもありません。現状の家裁業務をみると、すでに氏名についての特殊ケースを処理するという類似の業務があります。戸籍法107条が定める、「やむを得ない事由」による氏や名の変更です。2001年(平成13年)実績では氏の変更の申立て件数は11,888件あります。ただし、この法律では夫婦の片方のみが氏を変えることはできませんが。氏や名の変更審査と同様に、夫婦別氏も家裁に審査してもらうのはそんなに突拍子もないことではないという考えです。推進派からすればそこまで厳格な審査が必要とは思えませんが、反対派と歩み寄れたのは大きな進歩です。実際に、その提案をした反対派議員はそれ以降は法務部会で反対を唱えることはなくなりました(ついでに「実現させる会」に加入してもらいたいですね。提案者ですし)。

 加えて夫婦の別姓は「例外的」であることを明記し、既婚夫婦が別姓から同姓への転換は可としても、同姓から別姓への転換は許可しないとしています。つまり別姓ができるのは家裁の許可を経て婚姻届を出す場合のみです。

 当初は「家裁の許可」という要件に夫婦別姓に賛成している間ですら動揺が広がりました。しかし繰り返しになりますが、この案は法制審答申の夫婦別姓に関する項目だけを抜き出し、夫婦が別氏にすることを家裁に申請することを要件として加えたものです。家裁に許可して貰うのは婚姻ではありません。夫婦が異なる氏を持つことです。

 民法の一部を改正する議員立法案〜例外的夫婦別姓制度は、野田聖子氏HP「ひとこと」欄 平成14年 7月24日付け記事に、骨子、要綱、前後の対比表まで詳しく掲載されています。

 最も関心を持たれるのはこの案の最も独自性を出している部分、家裁が夫婦別姓を許可する条件です。それは、

  1.職業生活上の事情
  2.祖先の祭祀の主宰
  3.その他の理由

のいずれかです。1は夫婦別姓でないと職業上で支障をきたす場合、2は家族の事情です。反対派はよく「夫婦別姓をする夫婦は祖先や家族を大事にしない」と口にしますが、家族を大事にするからこそ夫婦別姓が大事であるという人もいることを2には込められています。それでもなお反対するのなら、家族や祖先を大事にすることの重要性を訴えた反対派の主張は本意だったのか疑わしくなります。ただし今度は推進派が一見して家制度を連想して拒絶感を示すこともあり、よく考えれば納得されるのですが、なかなか微妙です。

 家族を大事にすべきだとか、家(制度)に人間が囚われてはいけないとか、法改正の議論に価値観を争点としたらいつまでも決着をみることはないでしょう。夫婦別姓推進派も反対派もたまに忘れがちですが家父長的な家制度は法律上にはもう存在しないのです。だからといって家族を否定するわけでもありません。制度は個人と家との距離を強要するためのものではありません。そうした家族と個人の関わり合いの度合いや価値観もまた自由であるべきで、実際に法律が制御できる領域でもありません。双方の価値観を尊重できる法制度を整備すべきではないでしょうか。

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